金髪の孺子と赤毛のボウヤとその彼女達

銀英伝ライキルでその嫁との妄想にふけたり、我が国のミリな制服や乗り物に萌えるブログ(のハズ)

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【バースデイ or ホワイトデイ】猫屋 真

そう言えば、キルヒアイスにも【副官】はいたはずですよね。
小説、OAVいずれにも登場しないようですが(猫屋)


そんなこんなでキルヒの誕生日にはいただいていたシロモノ。
ネタがホワイトデーなので、おあずけをくらいました(^-^;9(南秦広)


「はい、あの、菓子でありますか?」
キルヒアイスはラインハルトの傍らで副官、あるいはそれに近い任務を務めていた時代が長い。初めて独立部隊の指揮を執ったカストロプ動乱に至り、キルヒアイス自身もまた副官を持つ身となったわけである。
カストロプ動乱でキルヒアイスの参謀長となったベルゲングリューンの名は広く知られているが、今、赤毛の提督の前で困惑に表情を曇らせている年若い中尉も、カストロプ動乱以来の副官だった。
リップシュタット戦役に先立つ捕虜交換式典のために、彼がイゼルローン要塞を訪れたのは帝国暦四八八年二月半ばのこと。彼らはイゼルローン要塞から帝都への帰路を辿る『バルバロッサ』の艦上にある。
「ええ、お菓子です。小さい焼き菓子<バウムクーヘン>と砂糖菓子<キャンディー>のセットで、五〇〇個ばかり用意をお願いします。私事を頼んで申し訳ないのですが」
年齢から言えば、キルヒアイスはまだ二一歳になったばかりであり、副官の中尉は士官学校を一八歳で卒業してまる三年で中尉に昇任したので、やはり二一歳。同い年だが、ふたりの間には九段階もの階級差がある。事実、副官の目には同い年の提督への憧景と敬意こそあれ、若くして栄達した同世代への嫉視の色合いは皆無だった。
副官に私事の処理を命じるのは、この時期の帝国軍では珍しくもないことであり、また公私混同を責められることもない。すでに上級大将であり、ローエングラム元帥府副司令官として数百万の将兵を統べる立場でもあるキルヒアイスだが、一介の中尉への言葉は開くまで柔らかく、丁寧だった。
「そ、それは、あの了解であります。心当たりもあります。ええ、安くて美味い……いえ、あのリーズナブルな価格ですが、帝都でも指折りの菓子職人の店を知っています」
「では、お願いします。三月初旬までには揃えてください。三月の初めにもう一度『ブロッケン』がイゼルローン回廊へ向かいます。『ブロッケン』に預かってもらえるようにして下さい。『ブロッケン』の艦長には私からそのように話しておきます」
「は、はい。でも、五〇〇個……も」
「しかも、イゼルローン要塞へ、何のために持って行ってもらうのかと言うんですね?」
「え、あの、いえ、そんな、閣下のなさることに疑問など」
へどもどする副官にキルヒアイスは微笑った。
「いえ、事情は了解しておいてもらった方が良いでしょうね」
イゼルローンを発つ際に、キルヒアイスは『イゼルローン駐留艦隊 女性将兵有志一同』と称する巨大な『お土産』を受け取っている。ふた抱えほどもある巨大なパッケージであり、中にはチョコレートを中心とする菓子類がぎっしり詰まっていて、キルヒアイスを驚かせた。
「ああ、あのチョコレートでありますか」
副官の若者は表情に納得の色合いを帯びさせた。ついうっかりというか、パッケージをキルヒアイスに取り次ぐ役目を引き受ける羽目になってしまったのが参謀長のベルゲングリューン少将だった。
「同盟では、二月一四日に女性から意中の男性にチョコレートを贈る習慣があるそうだ」
捕虜交換式典自体は二月一九日であり、一四日からは五日を経過している。しかし、要塞宇宙港に降り立ったキルヒアイスの容姿は、要塞に勤務する同盟軍の女性将兵から絶大な好感を持って迎えられたようだった。すでに、『二月一四日』のイベントは終わっていたが、式典が終わって『バルバロッサ』が要塞を離れるまでの間に、イゼルローン要塞の同盟軍酒保と言わず、民間経営の菓子店と言わず、新たにチョコレートを求めに来る女性、特に女性将兵が後を絶たなかったと言う。
「参謀長閣下からお聞きしました」
同盟の女性というのは容姿の良い男性と見れば、誰彼構わず求婚するものなんでしょうか……副官の反応に、さすがにキルヒアイスは苦笑する。実際、彼自身がそう思ってしまい、『それなら受け取れません』と応答してベルゲングリューンを困らせたのだ。
「そんなことはないと思います。そういう意味もあるけれども、単に親しみを示すための儀礼のようなものだそうですから」
「そうでしょうか」
敵である同盟軍の人間に、敬愛する司令官をそんな儀礼の対象として扱われたことが今度は逆に不満だったらしい。副官はちょっと頬を膨らませた――が、彼もキルヒアイスの副官に選ばれるほどの士官であることは確かだった。
「――それで閣下、なぜ焼き菓子<バウムクーヘン>と砂糖菓子<キャンディー>を?」
「それも習慣だそうです。意中の女性からチョコレートをもらった男性は、感謝と応諾の気持ちを伝えるために三月一四日にそうしたお菓子で答礼する習慣だったそうです」
それも今は儀礼かお祭りのようになっているらしいですけれどね――言い止して、キルヒアイスはその日付につながる重大な事実に思い当たった。
「腕のよい菓子職人を知っていると言いましたね?」
「はい、閣下。まだ若いですけれど、小官の知っている中では最高の腕の持ち主です」
口調がひどく誇らしげで、言い切る頬が染まっているように見える副官に、キルヒアイスはちょっと不審の視線を投げたが、敢えてその点は追求しなかった。
「五〇〇個も用意してもらうのは大変でしょうけれど、もう一つだけ、お願いして良いですか」
「はい、閣下、何なりと」
「その、卿の知り合いの、最高の菓子職人の方に腕によりをかけてケーキを焼いていただきたいのです。こちらは一つで良いですが、そうですね、三〇センチくらいの大きなものを一つ。できたてを、届けてもらえるようにしてもらえますか?」
「はい、閣下。承ります――」
大きく頷き、副官は頬を上気させてキルヒアイスからの『依頼』を聞き取った。

『バルバロッサ』が帝都に帰還したのは三月初旬。すれ違うように戦艦『ブロッケン』は、キルヒアイスの依頼による数百個の菓子のセットを積み込んでイゼルローン要塞へと発っていった。
帝都に帰着すると同時に……というより、帝都星系に入ると同時に、フェルナーによるシュワルツェンのラインハルト邸襲撃事件に端を発する帝都の混乱の収拾に当たることになった。副官へ依頼した件のことは記憶の片隅にしまい込んだまま、しばらくは意識の表層に呼び戻すこともなかったのであるが――
数日の後、混乱が一時治まると、帝都の中で別の混乱が生まれた。帝都のめぼしい菓子屋が次々と襲撃……ではなくて、『バルバロッサ』と、『バルバロッサ』と共にイゼルローン要塞へ赴いた帝国軍の艦艇搭乗員が、これらの店に殺到したのである。
「焼き菓子<バウムクーヘン>と砂糖菓子<キャンディー>をくれ」
彼らはいずれも異口同音にそう叫び、店主たちを驚かせることになった。
「一体何事なんですか?」
商品が売れるのは良いが、黒と銀の制服の逞しい男たちが店頭に押し寄せてくるのである。店主たちが問い返すのは当然のことだったし、返答を聞いて呆気にとられたのもまた宜<むべ>なるかなである。
三月一四日に意中の女性に菓子を贈ると、結婚を承諾してもらえるのだ。あるいは振り向いてもらえる。よりを戻せる。仲直りできる、エトセトラ・エトセトラ……と。キルヒアイスやベルゲングリューン、あるいはキルヒアイスの副官が伝えた話が、帝国軍の将兵達の願望によってどこかで歪み、変形した結果らしかったが、ことが男女の間に関することだけに噂の広がりは早かった。この年の三月一四日までには時ならぬ『お菓子狂想曲』が帝都を席巻することになったのだが……

その三月一四日。キルヒアイスはシュワルツェンのラインハルト邸宅を訪れていた。無論、帝都を巻き込んでいる『お菓子狂想曲』は邸宅に及ばず、ラインハルトとキルヒアイスの間には巨大な内戦を前にした緊張と、押さえきれぬ興奮だけがあった。
そんな中、一台の車がラインハルト邸の前に現れ、警備の兵士の制止を受けて停止した。
「毎度ありがとうございます。ブラントミュラー・ケーキ店です。ご依頼のケーキをお届けに上がりました」
誰何する兵士の前でドアが開き、まだ年若い、少女と言っていい年頃の女性が元気いっぱいの声を張り上げた。
「ケーキだと?」
「はい。ええっと、ラインハルト・フォン・ローエングラム様に三月一四日にお届けするようにご依頼いただいています」
「ローエングラム侯に、ケーキ?」
警備の彼らの耳にも、『三月一四日』に関する噂は届いている。軍隊というのはとにかく噂が早いのだ。彼らの中には故郷に恋人や婚約者をもっている者も少なくはなく、よりによってこの日に警備の当直にあたってしまったことを、天を仰いで悔しがる者も一人ならずいたのは事実なのだ。
「ローエングラム侯にケーキを届けさせるとは、大胆な女もいるものだな」
彼らがそう思わなかったと言えば嘘になる。いや、一瞬にして彼らが共有した認識がそれだったとしても、まったく不思議ではなく、事実そうだったのだ。
「どこの女からだ?」
「え?」
少女はきょとんとし、それから慌ててポケットから伝票の束を掴みだした。慌ただしく伝票をめくって、大きく頷く。ポニーテールにした薄い茶色の髪が、頭の動きにそってぴょこぴょこと大きく跳ねた。
「いいえ、女性からのご依頼じゃないですよ。男性からです」
「男性から……だって?」
「はい。ええと……ジークフリード・キルヒアイス様。ジークフリードさまって言えば、やっぱり男性ですよね。おとぎ話に出てくる、ほら、あの不死の英雄のジークフリードさまも男のひとだったし」
「ジークフリード・キルヒアイス……提督が、ローエングラム侯に……ケーキ? 今日を指定して?」
少女の饒舌をよそに、唖然と茫然と当惑と困惑の視線が交錯し、ぶつかり合った視線が何となく決まり悪げにぐるぐると彷徨い始める。
「あのぅ、どうなってるんですか。お代はもう頂いているんですけど、受け取っていただかないと困るんです。ブラントミュラーの店は、お客に受け取ってももらえないようなひどいものを作るんだなんて言われたら、明日から店も開けられなくなるんですよ。材料だって最高のを使ってるし、こう見えても腕には自信があるんです。受け取ってもらえないなんて心外です」
「あ……ああ、わかった。ちょっと待て、確認する」
衛兵と詰め所を経由してキルヒアイスの副官へ何度かの通話が行き来し、やがて了解の印に衛兵の首が縦に動くのが見えた。
「キルヒアイス提督がご承知だそうだ。入ってよし」
「え、入っても良いんですか。こんな大きなお屋敷なのに? ローエングラム侯ってすごく偉い人なんでしょ?」
「お前が信頼できるケーキ屋だとキルヒアイス提督が保障して下さった。自分の手で届けたいなら、入ってきて良いと提督はおっしゃっている」
「そうですか。はい、喜んで!」
いかにもうれしそうに頬を真っ赤にした少女が、大きなケーキの箱を抱え、それでも慎重な足取りで邸内に入っていくのを、複雑極まる複数の視線が追いかけた。
少女の姿が邸内に消えると、小さな、互いの耳に届くのを恐れるかのような呟きが警備の兵たちの口許からこぼれ落ちた。
「ローエングラム侯とキルヒアイス提督が……まさか」

無論、自分たちがそんなあらぬ疑惑の的になっているなどとは思いも付かないキルヒアイスとラインハルトである。
「ケーキ屋がご注文の品を届けに来たと言って来ていますが?」
警備詰め所からの連絡が、一ヶ月近く前の副官への依頼をキルヒアイスに思い出させた。
自ら迎えに出た玄関ホールで、ケーキの箱を受け取った。振り返って、自らのすぐ後ろに佇立していた副官の若者が顔を真っ赤にして硬直しているのを視界に入れる。視線を転じると、ケーキ屋の少女もまた、頬を染めながらも満面の笑顔になって小さく手を振っている。それだけでキルヒアイスには事情を了解できた。
「わたしはケーキを運びます。伝票にサインをしてから、来て下さい」
「は、はいっ!」
上ずった声を背に、キルヒアイスはくすぐったい思いを抱きながら、居間へつま先を向けた。
「これは……でかいな。一体、どうしたのだ?」
二一歳。帝国と帝国軍を支配する独裁者とは言え、ラインハルトの甘いもの好きは一向に変わらない。キルヒアイスのもたらした巨大なケーキに、ラインハルトの表情は、帝国全土の覇権を狙う野心家から、おやつを前にした少年のそれに一瞬に変化した。
「アンネローゼさまにも来ていただきましょう。これだけ大きいと、切り分けるのも大変そうですけれど。わたしはコーヒーを頼んできます」
「そうだな」
なお、きらきらと視線をケーキの箱に据えているラインハルトの顔が、ちょっと不審気に曇ったようだった。
「で、一体、何でケーキなんだ?」
「お忘れですか、ラインハルトさま」
「何を……だ?」
「お誕生日、おめでとうございます」
そう、三月一四日はラインハルトの誕生日である。あの日、『バルバロッサ』の艦上で副官に菓子の手配を頼みながら、キルヒアイスは彼にとって最も重要な日付を思い出していたのだ。ラインハルトの誕生日。もし、キルヒアイスがイゼルローン要塞の同盟軍女性兵士達への返礼の手配をしながら、彼の誕生日を忘れていた、などと知れた時のラインハルトのむくれようを想像するのは、キルヒアイスにとって余りに容易いことだったのだ。
案の定、ラインハルトの秀麗な容貌からは拭ったように曇りが消え、満面の笑顔が取って代わった。
「そうか、俺の誕生日だったな」
「ええ、わたしの副官が勧めてくれました。帝都で一番の腕のケーキ職人だと」
あるいは、そうなると期待されている職人と言うべきだろうが……思いながら、キルヒアイスは箱を開ける。期待に違わず見事な出来上がりの、スポンジケーキとクリームとチョコレートと果物の芸術が姿を現した。
ケーキをテーブルの上に置き、キルヒアイスはふと眉を顰めた。ケーキの上に描かれた文字。当然、ラインハルトの誕生日を祝う文字であるべきなのだが……
『ラインハルト様へ愛を込めて……キルヒアイスより』
何か違う気がする。
「何をしているんだ。早く姉上をお呼びしてくれ、キルヒアイス」
放っておくと一人でケーキを丸呑みにしかねないラインハルトの勢いが、キルヒアイスに違和感の原因追及を断念させた。
ま――いいか。

本当はよくはなかったのかも……知れないが。


Das Ende



現在でも、某中将閣下の副官を努めたことのある友人の話を聞いていると、
基本的に副官はパシリです(笑)
職務解放されたと思ったら電話かかってきてワインを3本も買いにいかされたりしてます。
その後全員中将閣下という同期のオッサン達の集う自分のボスの部屋のすみっこで
待機させられて閣下達のお話をありがたく拝聴させられたり…(笑)
荷物持ちです。ジャーマネです。閣下のお客のホテルの手配とかもさせられます。

また、知り合いの少将閣下の副官がグリコのおまけを付け忘れた少閣下の制服に
お食事中の閣下の横からつけてさしあげるという
かいがいしいお世話を至近で見てひそかに萌えているとは
少将閣下も気がつくまい(笑)

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某基地での式典に出た時に激写した
某閣下付き副官サン。

南秦広
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